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著者:谷 隆一郎

発行日:2019/10/30

ページ数:240頁

判型:A5判

ISBN:978-4-86285-303-5

出版社:知泉書館



「神」とか「キリスト」について,その意味を問うことは,一見宗教的で特殊な事柄のように思われる。しかしそれは時空を超えてすべての人に関わる問題である。このような立場から「ロゴス・キリストの受肉」「受難と復活」,そして「十字架による贖いと救い」といった問題を,「愛智の道行き」としての哲学の観点から「人間・自己の成立に関わる普遍的問題」として,素朴にかつ根源的に明らかにしようとする試みである。

問題を対象化して分析する一般的な方法は,問題の真相を隠してしまうことがある。著者は事柄が成立する原初的な場や意味そしてその機微を,当の場面に立ち帰り,キリストと直に触れ合った使徒や教父に寄り添いつつ,自らのこととして見つめていくことによって,その真実を問い披いてゆく。それにより使徒たちの生の変容や再生,さらに新しい人の誕生を闡明にする。

使徒とキリストとの霊的出会いは神の働き・霊により,否定・無化の働きはキリストと十字架の復活に由来するものであり,さらに証聖者マクシモスは十字架と復活の働きは,時と処を超えて「すべての今」に現前するとした。本書はこれらすべての問題の根底には神的エネルゲイア・プネウマの生動的な働きがあることを解明する。宗教と哲学を架橋する著者の到達点を示す貴重な一書である。





目次



はじめに

第一章 原初的・使徒的経験とその成立根拠をめぐって――「ロゴスの受肉(神人性)」を証しするもの

第二章 証聖者マクシモスの「ロゴス・キリスト論」(『難問集』第一部「トマスに宛てて」)のまとめと展望

第三章 人間的自然・本性の開花・成就と神化の道行き――根底に現前する神的エネルゲイア・プネウマ

 一 「善く在ること」ないし「善きかたち」の成立と神的エネルゲイア・プネウマの現存

 二 存在の次元における罪の問題――存在(神の名)の生成・顕現に逆説的に関わるもの

 三 情念と自己変容――否定・浄化の道行き

 四 身体ないし身体性の問題――魂と身体との同時的生成

 五 愛による諸々のアレテーの統合――神の顕現のかたち

 六 創造と再創造をめぐって――創造における人間の役割

第四章 ロゴス・キリストの十字架と復活――神への道行きの内的根拠をめぐって

 一 キリストとの原初的出会いの場に

 二 復活の内的経験を問い披く――神的エネルゲイア・プネウマないし神人的エネルゲイアの現存

 三 「キリスト自身の範型的信の働き」と「われわれの信」との内的関わり

 四 キリストの十字架の象徴的意味とその働き――魂・意志のうちなる神の働き・わざ

 五 「十字架による贖い,救い」の内実

 六 十字架の階梯と「キリスト的かたちの形成」

第五章 他者との全一的交わりとロゴス・キリストの現存――「受肉の神秘」の前に

 一 創造の収斂点としての人間

 二 他者との善き関わりとロゴス・キリストの現存

 三 受肉の現在 神の憐れみの先行
第六章 神的エネルゲイア・プネウマの現存に思う――探究の道を振り返って

あとがき



参考文献

索引

受肉の哲学
原初的出会いの経験から,その根拠へ

型番 9784862853035
ポイント 220pt
販売価格 4,400円
購入数

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