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UBSの一員としての日本聖書協会

掲載日:2014/11/11

UBSの一員としての日本聖書協会

2011年3月日本聖書協会発行『SOWER(ソア)』No.37より
*文中にご紹介する社名、人名や肩書き、製品やその機能、価格等は当No.発行時のものです。
*なお、写真や図版が加わったソアのバックナンバーPDFは
http://www.bible.or.jp/soc/soc07.html
からダウンロードできます。

○始まりは六つの加盟国から

アメリカ聖書協会のエリック・ノース総主事が提示した聖書協会世界連盟(UBS)事務所の働きは、その後も時代の変化に対応しながら、各国の聖書協会の働きを円滑にするために機能しています。

1946年、六つの加盟国から始まった聖書協会世界連盟は、現在、147の加盟国が200以上の国と地域において共に協力しながら、神のみ言葉を届けるという使命を達成すべく尽力しているのです。

日本聖書協会は、1949年に聖書協会世界連盟に加盟しました。ニューヨークで開催されたこの年の総会は、UBSの基礎を固めました。

UBS設立から10年経った57年には、24の聖書協会が加盟していました。その後、63年には第8回UBS総会が日本の主催で箱根において開催され、後のカンタベリー大主教のコーガン総裁、戦時中に尽力したベガン第2代総主事をはじめ、加盟聖書協会の代表が集い、初めてUBSが加盟全協会の聖書頒布に世界的規模で責任を負うことが表明されました。

「新時代への神の言葉」を標語とし、「すべてのクリスチャン・ホームに一冊の聖書、すべてのクリスチャンに少なくとも新約聖書一冊、識字者すべてに少なくとも分冊一冊、すべての教会員が地域に聖書頒布できる機会を作ろう」という大胆な訴えのもと、これまで年5000万部であった聖書頒布を、3年後には1億5000万部としようと決議した記念すべき総会でした。

2010年の世界大会まで

相互協力のために生まれたUBSは、加盟聖書協会およびその支社を支援するため、翻訳、財政などの面で協力を進めていきました。

1964年の会議では、他国に支援できる聖書協会の募金を合算し、必要国へ配布する“ワールド・サービス・バジェット”という制度が提案されました。

66年には、それまでアメリカ聖書協会(ABS)と英国と海外聖書協会(BFBS)が担ってきた予算管理もUBS事務所で行うようになり、UBS常任理事会(Executive Committee、後の世界理事会Global Board)での承認をもって各地に配分されるようになりました。

また同年には、全世界が四つの地域(アメリカ、アフリカ、ヨーロッパ中近東、アジア太平洋)に分けられ、それぞれに地域センターが設置されました。

このようにして、地域総主事と地域理事会がその地域内の共通課題に取り組み、UBS常任理事会の提案を国ごとに地域に合ったかたちで遂行できるようサポートする体制も整ったのです。

こうした対応は、頒布の拡大に働きの焦点を置くという箱根での決議を具体化するためには必要不可欠なことでした。

1966年、バックヒルフォールズでの会議において、UBS総会は6年に1度開催されることになりましたが、72年、エチオピアの首都アディスアベバで持たれた会議では、8年に1度の開催と決められました。

その後、総会は80年にタイのチェンマイ、88年にハンガリーのブダペスト、96年にカナダのミシサガで開催され、毎回新しいスローガンとともに時代に即した方針が決められました。

さらに、UBSの加盟国が130国余りに増加したことで機構改革が求められ、また国際化や情報伝達の高速化に対応すべく、2000年には南アフリカのミッドランドで臨時のUBS総会が開かれました。

この総会ではUBSの基本と精神(Identity and Ethos of UBS)が確認され、より効果的な聖書頒布を目指して各国の聖書協会が協力し合うことが声明として採択されました。

翻訳事業での協力も、1946年のUBS設立の際に打ち出された方針の1つでした。発足当初からエキュメニカルな働きを理念の根幹に据えていたUBSは、翻訳作業においても一致協力しました。

ABSやBFBSが、アフリカやアジアなど言語の多い地域に支社を増やしていく中で、各地で翻訳に尽力する宣教師は当時すでに五、六百人いましたが、彼らが作業を効率よく続けるためには、情報や資源の共有も欠かせませんでした。

50年に第1号が発刊された The Bible Translator は、すべての翻訳者が最新の翻訳学と神学の情報に触れ、互いの疑問や懸念事項を分かち合うための媒体となりました。それまでABSとBFBSが別々に発行していた翻訳ガイドも1つにまとめられ、Translators Handbook として翻訳者たちに届けられました。

それと同時に、UBSとして共有する翻訳方針も構築されていきました。また、翻訳者の作業を学問的観点から助言・サポートする翻訳コンサルタントやコーディネーターの養成にも力を入れるようになりました。

翻訳面で特筆すべき転機も1964年に起こりました。UBSは長年、聖書翻訳に関してカトリック教会と何らかの提携をしたいと望んでいました。

世界の教会指導者との関係をめぐる協議会が64年、オランダのドリーベルゲンにおいて開催され、聖書翻訳者の協働を可能とするための標準原則の提案要網が採択され、68年にカトリックとプロテスタントの双方に受け入れられました。

その結果、各国で共同訳聖書が生まれました。日本聖書協会もこれに倣って共同訳聖書の完成を目指し、カトリック教会とプロテスタント諸教会が一致協力して誕生したのが「新共同訳」(1987年発行)です。

2004年、UBS創立200年を記念して世界大会が発祥地のウェールズで、続いて10年9月20日から24日にかけて韓国ソウルで開催されました。「この世の命―神のことば(God’s Word―Life for the World)」というスローガンのもと、約400人にのぼる総会代議員の出席がありました。

この大会でUBSの新総主事に、ミラー・ミロイ氏(2004〜)の後任として、マレーシア出身のイギリス人マイケル・ベロー氏が2011年1月から就任することが決まりました。

○日本が世界に大きく協力する時代へ

さて、UBSの協力事例の一つとして、中国の聖書印刷工場の建設が挙げられます。話はやや遡りますが、文化大革命で荒廃した中国の教会を支援するため、印刷工場を建設することがUBSと中国政府および中国基督教両会との間で合意され、1986年、UBSは世界に募金を呼びかけました。

UBS加盟当時の日本はBFBSやABSからの支援を受けていましたが、戦後の経済成長とバブルの時代を経、また、募金委員の先生方の努力と募金者の懸命な支援により、約1億円(当時で62万5000ドル)を献げることができました。これは、世界の募金総額726万6000ドルの中で、アメリカ、西ドイツに次ぐ額でした。

続いて1989年のベルリンの壁崩壊後、東欧・旧ソ連地域において聖書を求める声にもUBSは応えるべく、全世界の聖書協会が立ち上がり、総額5800万ドル(約87億円)を目指す募金活動が展開されました。

この時も日本では、世界総額の1%の9000万円を目標に据えて募金委員会が発足し、9082万円の献金を献げることができました。彼の地域への支援は今日もなお、より具体的な目的を持って継続しています。

21世紀に入って

21世紀に入ってUBSは、世界の聖書頒布が不十分な国や地域を支援する「オポチュニティ21」という募金計画を打ち出しました。UBSで集めた募金額と同額を献金するというアメリカのマクラレン財団からのオファーを受け、総額3000万ドルの募金を約400のプロジェクト支援のために献げました。

翻訳活動に目を転じますと、信仰的にも学問的にも最高レベルを持つ、訓練を受けたUBSの翻訳担当者が、現在、550以上の言語の翻訳に携わっています。資金は支援聖書協会によってまかなわれています。

また、聖書の製作については、韓国、ブラジル、中国など、世界数カ国にUBSの製作拠点があり、同言語の聖書などは、UBSの地域事務所が複数の国からの注文を統括し、効率よく印刷しています。

また、教派間の橋渡しとしても機能しており、カトリック教会、東方教会をはじめ、すべての教派との絆を深めるため、それぞれの本部との対話を頻繁に行っています。

たとえば、2002年に日韓共催で開かれたW杯サッカー大会の折には、韓国聖書協会との共同製作で、『よろこびのおとずれ−10言語版ルカによる福音書』、および新しい組版による『韓日対照旧新約聖書』が製作(韓国にて印刷・製本)されました。特に前者は、W杯のための伝道団体などによって、両国合わせて10万冊が頒布されました。

このように、各国の聖書協会は聖書協会世界連盟という組織体制のもとに一致協力して、地の果てにまで聖書のみ言葉を届けるべく奔走しています。

UBSに加盟している147の各国聖書協会のうち、財政的に自立していて他の国を支援しているのは40ほどです。

日本聖書協会は、日本全国の諸教会と個人の会員の皆様による支援と聖書頒布によって、UBSにおいて運営の自立と支援協会としての責任を果たしていますが、ほかの被支援国においてもこのような動きが拡大することが望まれます。

「わが国のためだけでなく、世界のために!」という初心を胸に、「御国のこの福音はあらゆる民への証しとして、全世界に宣べ伝えられる」(マタイ24章14節)時まで、聖書協会の働きは終わることはないでしょう。

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